活動予定

当団体代表の森啓子 は、2011年からルワンダの火山国立公園でゴリラの撮影に取り組んできました。この活動を通してルワンダ政府のルワンダ開発局(Rwanda Development Board)および火山国立公園との信頼関係を築くとともに、ゴリラを守ろうと日々努力している人々を支援する方法を模索してきました。下記に示す現地プロジェクトは全て、RDBの公園担当者及び公園長との話し合いを重ねる過程の中で生まれたもので、いま現場で最も必要とされているものです。

 1. ゴリラのモニタリング体制の強化・支援

© Keiko Mori/ Rwanda Development Board

適切にゴリラを保護していくためには、ゴリラの状況を常に把握することが重要ですが、火山国立公園においてはその体制が未だ不十分であり、支援を必要としています。装備品の充実というハードの部分と、意識の変革というソフトの部分の、両方の観点から支援していきます。

高機能トランシーバーの購入

トランシーバーは、森にいるトラッカーたちが公園事務所と交信し日々の業務を円滑に進めるために欠かせないツールですが、現在、 使えるトランシーバーの数が少ないため、公園ガイドやトラッカーがトランシーバー無しで森に入らざるを得ないことが日常的に起きています。 政府は、GPSを装備し、位置情報の追跡記録やテキストメッセージの送受信もできる、モニタリングに有用で高機能な機種の購入を検討していますが、それでも数は十分ではありません。これと同型機のトランシーバーを 10個購入し、国立公園に寄付します。

ゴリラファミリーカード

これまでも継続してきた取り組みですが、現在21ある各ゴリラ集団の名前と写真、個体間の血縁関係を1枚のカードに盛り込んだ「ファミリーカード」(A3サイズ)を作成し、年に2回更新しています。これは公園ガイドが各ゴリラ集団の個体を識別しその構成を学ぶときだけでなく、 観察しに行くゴリラ集団のことを事前に観光客に説明するときにも使います。個体間の関係性を正しく把握することで、各個体の行動の意味や背景について理解が深まります。

トラッカー向けの写真撮影の技能講習

ゴリラを日々追跡し行動を観察・記録する役割を担うトラッカーたちの、モニタリング (観察及び記録)への意欲や個体識別の正確さを向上させるために、彼ら自身がカメラを持ち、ゴリラの写真を撮ることを励行します。ゴリラの個体を識別するときには 鼻のシワの様子(鼻紋)が一つの目安になるため、撮影に必要な基本操作の知識だけでなく、鼻紋をうまく撮るためのポイントなども合わせて習得してもらい、トラッカー全員が優れた観察者になり的確に記録できるようになることを目指します。カメラ、パソコン、プリンターを公園に寄付し、技能講習も行なっていきます。

シニアトラッカーによる口頭伝承
定年を迎えて引退したシニアトラッカー達の記憶には、ゴリラを見つめ 、森の中で過ごした長い年月の記録が刻まれています。さまざまなゴリラたちの個性や行動、集団の構成の変遷、森の変化など、彼らの語りをビデオに記録していき、その豊かな知識を次世代に伝えられるようにします。

 2. 感染予防用アルコール消毒ジェル提供

© Keiko Mori/ Rwanda Development Board

霊長類のゴリラには、人獣共通感染症(Zoonosis)に特に注意を払わなければなりません。ルワンダなど三ヶ国 にまたがるビルンガ火山帯に生息するゴリラは1,000頭あまり。もしこの個体群に感染が広がれば、その影響は壊滅的です。

過去にコンゴ北部で数千頭のゴリラが人獣共通感染症であるエボラ出血熱のために死亡しました。最近では、コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が流行。その終息には2年以上を要しました。現在世界中で猛威を振るっている新型コロナウィルス感染症も人獣共通感染症であり、ルワンダでは2020年3月から3ヶ月間、ゴリラの住む火山公園への観光客の入園を禁止しました。

このような状況を踏まえ、人間からゴリラに感染しないようにするため、公園に入る観光客や公園関係者ら全員に対して、手のアルコール消毒を励行します。アルコールジェルを公園事務所や、森の中にあるレインジャーの詰所に設置します。

 3. ルワンダでの啓発活動

(C) Keiko Mori

火山国立公園では 、将来的に公園を拡張する計画が検討されています。これは、該当地域にいる18,000人もの住民に対して、より良い生活環境を提供しつつ段階的に移転してもらった上で、現在農耕地となっている土地をゴリラの住める森として再生させるという壮大な計画です。

この計画を円滑に進めるためには、移転することになる地域住民の方々の理解が不可欠です。現在、国立公園と地域住民との関係は良好で、この計画についての理解も進んでいますが、特に将来この地域を支えていく子どもたちに、森の生態系のしくみやゴリラが置かれている状況について、深く理解してもらうことが極めて重要です。

 様々なゴリラの写真を使った紙芝居のような教材を制作し、子どもたちが楽しみながら学べるような工夫をして、将来の移転対象になる予定のコミュニティに出向き、子供たちだけでなく、教師や元密猟者などにとっても学びの機会となるようにしていきます。

 4.日本からトーク番組の配信

(C) Keiko Mori

「なるほど、ゴリラを絶やしてはならない」という実感を持っていただくためのトーク番組を制作し、YouTubeを使って配信していきます。

森啓子代表が自身で撮影したゴリラの映像と写真を見せながら、ゲストとのトークを交え、ゴリラの群れの中で起きている様々なドラマを語り、彼らの生き様を伝え、広く一般市民の方々にゴリラに興味を持っていただきます。

そして、ゴリラが森の生態系の中で担っている役割、98%以上のDNAを人類と共有するゴリラから得られる人類学的知見、地域社会の生活水準向上 とゴリラ保護の密接な関係 、また、ゴリラが直面している危機的な状況についても説明し、ゴリラ保護の意義と重要性について理解を深めていただくことをねらいとします。番組は英語字幕をつけて世界に向けて発信します。